伴侶動物向け 血液凝固異常の診療支援

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獣医師向け

  • 止血とは?

    血管壁が損傷すると、出血を最小限にするために生体内で止血機能がはたらきます。止血機能は、血管損傷部位での初期反応である一次止血機能と、その後に安定な止血栓をつくる二次止血機能に区別されます。一次止血機能は血小板やフォン・ビレブランド因子の働きで血小板血栓をつくり、二次止血機能は血液凝固因子を連鎖的に活性化する血液凝固反応によりフィブリン血栓をつくります。

    これらの機能は便宜的に区別されていますが、生体内では相互に作用しながら、血管損傷部位に限局して止血栓を効率よく形成します。

  • 血液凝固反応とは?

    血液凝固反応は、血液中に微量に存在する血液凝固因子が異物面や血小板膜上で複合体をつくり、Ca2+の存在下で反応を進行させ、最終的にフィブリンを生成する一連の機序から成ります(滝の流れのように連鎖的に酵素反応が生じるのでカスケードと言う)。組織因子(TF)が関与し、フィブリン形成に最も重要な役割を担う外因系と、異物面と接触することにより始動し、線溶や炎症反応にも重要な役割を担う内因系に分けられます。

    (上記及び下図は、生体内での実際の機序とはやや異なる生体外の機序を説明していますが、凝固検査を理解するのに役立ちます。)

  • 血液凝固検査とは?

    血液凝固因子の異常(すなわち二次止血機能の異常)をスクリーニングするための検査が、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)および血漿フィブリノゲン濃度(Fib)です。

    PTは外因系と共通経路の異常を、APTTは内因系と共通経路の異常をスクリーニングします。また、Fibは、凝固の最終産物・フィブリンの素になるフィブリノゲンの質的あるいは量的な異常をスクリーニングします。

  • 血液凝固異常症とは?

    二次止血機能に関わる凝固因子に異常がある、すなわち、いずれかの凝固因子が欠乏しているか、あるいは正しく機能しない、と凝固反応が滞り、出血傾向を生じます。このような病態を血液凝固異常症といいます。

    (正確には、二次止血機能には「抗凝固因子」も関わっており、これらの異常によって血栓傾向になる場合もあります。)

    血友病を初めとする先天性血液凝固異常症が単一の凝固因子活性の低下によるものであるのに対して、後天性血液凝固異常症は通常、複数の凝固因子活性の低下が原因となり出血傾向を示します。

    後天性血液凝固異常症は、凝固因子の産生低下(ビタミンK欠乏症・肝疾患など)、凝固因子の消費亢進(播種性血管内凝固DICなど)、凝固因子に対する抗体(インヒビター)の出現によって発症します。診断には、スクリーニング検査のPT、APTT、Fibの他に、TAT(トロンビン・アンチトロンビン複合体)、AT(アンチトロンビン)、FDP(フィブリン/フィブリノゲン分解産物)、D-dimer(Dダイマー)を測定します。

  • 血友病A(第Ⅷ因子欠乏症)の診断は因子活性の測定でよいか?

    第Ⅷ因子活性が低下してAPTTが単独で延長することもある他の病態、具体的にはフォン・ビレブランド病(重症型*)を除外する必要があります。このため、フォン・ビレブランド因子抗原量を測定します。

    *)フォン・ビレブランド病(重症型);フォン・ビレブランド病は、フォン・ビレブランド因子の量的または質的な異常による疾患です。フォン・ビレブランド因子は第Ⅷ因子を結合し、その安定性に関与しているため、フォン・ビレブランド因子が著減している重症型(type Ⅲ)のヒトでは、第Ⅷ因子活性が低下してAPTTが延長します。しかし、イヌやネコでは重症型(type Ⅲ)であっても第Ⅷ因子活性が低下せず、APTTが延長しない場合の多いことが報告されています。これは、イヌやネコではヒトと比較して第Ⅷ因子活性が高い(イヌではヒトの8倍、ネコでは13倍)ためであると考えています。