臨床症状と一致しない凝固時間の延長を認めた時には
凝固時間の延長をそのまま「出血傾向」と判断しない
臨床症状と一致しない凝固時間の延長を認めた場合には、単純に出血傾向と判断するのではなく、採血手技や検体の状態に問題がなかったかを確認する必要があります。
採血手技の不良により検体に組織因子が混入し、凝固因子が活性化する過凝固状態に陥ることがあります(写真)。この場合、ヒトでは凝固時間(特にAPTT)が短縮することが知られていますが、凝固活性が高い犬や猫では、フィブリノゲン濃度が低下し、凝固時間が延長することがあります(症例data)。

症例data;基礎疾患がなく出血症状のない猫に、PTの重度延長(>120.0 sec)を認めたとのことで精密検査の依頼を受けた症例。フィブリノゲン濃度(Fib)は未測定であったため、精密検査時にFibを測定したところ、<50.0 mg/dLであった。新たに採血した後、FibおよびPTに異常のないことを確認した。
このように、凝固時間が生体内の状態を正しく反映しているかを判断するためにも、フィブリノゲン濃度は信頼できる指標となります。
この他に、検体の状態に影響する要因には、血球容積(PCV)異常による抗凝固剤の過不足、血漿分離時の血小板(リン脂質)吸引などがあります。「よくある質問」の項目をご参照ください。
接触因子の異常について
採血手技や検体の状態に問題がない場合には、接触因子(第Ⅺ因子、第Ⅻ因子、高分子量キニノゲン、プレカリクレイン)の異常を考慮する必要があります。これらはいずれも出血症状を示さずにAPTTの延長をきたす*ため、臨床症状との不一致が特徴です。
*第Ⅺ因子欠乏症は、外傷などの侵襲時に出血を生じ易いことが特徴であり、かつては血友病Cと称されていました。猫ではメイクーン種の遺伝性第Ⅺ因子欠乏症の報告があり、また第Ⅺ因子に対する阻害因子による後天性の欠乏症の報告もある。
このような無症候性にAPTTが延長した症例では、APTTの測定条件(活性化剤の種類や活性化時間など)を変えて検査することで、接触因子の異常を確認できる場合があります。この検査は、院内または一般の臨床検査機関では対応が難しいため、Vet Coag Careでの検査を推奨します。
「検査・コンサルティングの事例-APTTが延長しているのに止血異常ではない?」もご参照ください。